○市民健康教室「口腔ケアへの取り組みから

市民健康教室(健康)を考えるー口腔ケアへの取り組みからーがこのほど開かれ、シミズ歯科医院の清水勝行院長が、ボランティア体験を基に口腔ケアの大切さについて語った。

苫小牧市、市医師会など主催。講演の要旨を紹介する。

私は今、歯科衛生士の仲間の協力を得て、特別養護老人ホームでボランティア活動をしています。その取り組みの中から、健康である方がいかに社会にむけて発信していったらいいのかを、お話ししたいと思います。

健康とは何かを改めて考えて頂きたいのです。                                          

口は最初の関門

私たちには老化という現象があります。

いろいろな衰えの中で、特に口の中では、唾液は老化とともに少なくなってきます。ここで死亡原因の中で、肺炎の死亡率の高いことが重要なポイントです。

口腔ケアがなぜ必要なのかと言いますと、呼吸にしても、物を食べる、栄養補給にしても最初の窓口は口です。ここに不必要なものがあれば、肺にも、胃にもいきます。強い胃酸ですべての菌が死滅すると言われていましたが、現実には菌が生息していることが最近確認されました。ピロリ菌はもともと体内にあるものではなく、外からやってきます。ですから手を洗いましょう、歯を磨きましょうなどと言われているのです。

ストレスも影響

私たちの体がストレスを感じた時に、よく胃かいようになると言いますね。でも胃かいようだけではないんです。歯の中には歯随があってここに神経があり、

リンパ、血管という大切な物が流れてきておりストレスによっても刺激を受けます。内部から外部へ、歯は崩壊の一途をたどります。ですから歯という局部だけではなく総体的に見ることが大事です。

大切な唾液                                                    唾液は幼児のころはよだれといい、大人になるとつばといって汚いものと思われていますが、とても大事なものです。唾液の成分は99%が水分で0.5%が有機質です。そして消化作用、清掃、成長、発育、老化防止作用などがありますが特に大事なのは免疫作用です。つばのたくさん出る人は老化防止になります。

この大切な唾液を減少させる薬剤があるんです。増齢とともにお世話になる確率が高い血圧降下剤、睡眠剤などです。でも唾液はゼロにはなりませんから、心配には及びません。ただ問題なのは口の中から入り込む細菌です。私たちは細菌と共存共栄していますが、一定の数以上は欲しくない。これをコントロールするのが唾液です。増齢とともに唾液は減り細菌は増えますが、歯を磨いて細菌を減らせばいいんです。唾液が減少したら水分補給すればいい。お茶は細菌をコントロールする力を持っているカテキンを含んでいますし、水はなかなかたくさん飲めないので味のついている番茶がいい。いろんなことを考えてバランスよく取っていけばいいのです。細菌が肺に入ったらどうなるのか。免疫機能が落ちてくると肺に炎症を起こしますが、ケアすることによって細菌数がグッと減ります。唾液が多少減っても抵抗力が少し落ちていても、ケアしていれば感染することはありません。

 

義歯

義歯を長いこと口の中に入れて置きますと、圧迫され細菌が介在することによって歯茎が赤くなったり、粘膜が腫れてきたりします。夜寝るときには必ず外して粘膜も休ませるべきです。そして色をつけて汚れを確認し、落ちるまで磨きます。義歯には必ず金属の部分がありますし、材料にはミクロの穴があります。私たちの目は大ざっぱにしか見えませんから義歯洗浄剤を使った方がいいと思います。義歯を入れることによって身体活動性能力が高まりますから、義歯を装着した方がいい。義歯がなければ、飲み込むのに時間がかかり括約筋を運動させられないというマイナス面があります。

口腔機能維持と、口腔衛生管理は健康の基本ですが、誰にでも、ほかの人たちにやってあげられることは口腔衛生管理です。これを主体にやっていただきた

い。原点は心のケア、目的はQOL(生活の質)の向上もありますが、笑顔に重点を置くべきだと思います

口の中はストレスに影響される、変化が起きると言いましたが、衛生的にすることによってハピネスホルモンが出て、全身が健康になります。私が現実に行っている症例を紹介したいと思います。

 

笑顔になった

歯科衛生士さんとともに、ここ数年特養老人施設にで月一回行っているものです。Aさんは私たちが行くと笑顔で迎えてくれます。これは私たちにとって最高のもてなしです。Aさんは歯にたくさんのものがついていましたが、手に歯ブラシを握れず掃除もできませんでした。掃除したら『さっぱりした』と言い笑顔になりました。施設では他の方もいますし、忙しそうにしている職員に言いづらいんです。知識を周りの人に伝え、歯磨きは誰にでもできることなので、ぜひやってほしい。Bさんは口臭もひどく汚れていました。四週間にたった一度ぐらいしかできないのですが、それでも改善。口臭がぐっと減りました。同時に最初に歯ブラシを 当てたとき歯茎はすぐに出血しましたが、今はしません。それほど劇的に変化するのです。口腔衛生してあげることが、ケアということの一つです。舌は本来ピンク色です。白くなっていたら表面を磨いて下さい。ただし粘膜ですから柔らかいブラシでゆっくり丁寧に磨いて下さい。

 

義歯を入れる

Cさんはなかなか飲み込むことができなっかたのですが、義歯を入れ、誤嚥もなくなり、食事も普通食ができるようになりました。顔つきも健康になりまし

た。義歯の清掃は毎日とは言いません。ひと月に一回でもいいのです。特に金属のかかっているところは不潔になりやすいので丁寧に流水で洗ってください。

さて、ここで洗った歯の保管も大事なんです。保管のための水が汚れていてはばい菌に漬けておくようなもの。きれいな液体の中に保管してください。口の中の衛生ケアをすることで、笑顔がよみがえり、食事もきちんとできるようになると、車いすに斜めに傾いていた体も真っすぐに座れるようになりました。私たちは現実に劇的に変化した様子を目の当たりにした時に、ケアは大事だと実感したわけです。私たちが行くと笑顔で迎えてくれる。これが最高です。筋肉を鍛えるそれから、リハビリも付きまとうことですが、口輪筋、口の周りの筋肉を鍛えることです。子供のおもちゃの”吹き戻し”、あれはとてもいい運動になります。すっぱいものを食べたときの顔、口をすぼめる運動もいいのです。舌を前へ出す運動は絶対必要です。飲み込む力がつきます。黙っていては筋肉がなまります。歯は、全体であり、部分でもあるということです。健康は全体を見て部分を見るということを考えていただきたいと思います、そして社会的健康を得るために、ぜひ外へ出て口腔ケアを行っていただきたいと思ます。


○市民健康教室「歯と健康の話」

いつまでも自分の歯で長生き

 苫小牧市、苫小牧市医師会など主催の市民健康教室がこのほど開かれた。坂歯科医院の坂康司院長による「歯と健康の話」の講演を紹介する。

 歯がなくても元気な方はたくさんいらっしゃいますが、長生きの秘訣(ひけつ)の一つとしては、いかに自分の歯を残していくかということが課題です。苫小牧歯科医師会では八十歳で自分の歯を二十本残そうという8020運動を行っています。現状は八十歳で八本ぐらい、六十歳で二十本ぐらいですから、達成するにはまだまだ時間がかかりそうです。自己管理によって自分の歯を長く持たせるように習慣付けることが大事です。

 ▼全身の健康とのかかわり
 虫歯や歯周病、不正咬合(こうごう)など、歯や歯肉に病気や問題があると、それが基で、肩凝りや胃腸障害、心臓、腎臓など全身の健康にも大きな影響を与えることがあります。歯や口の中の調子が何か変だなと思ったら、逆に消化器や呼吸器の病気が原因の場合もあります。
 歯の一番外はエナメル質で、中に象牙質、その中心部に歯髄があります。骨と歯はついているのではなく、その間にはセメント質、歯根膜があり、物をかむときのクッションの役目を果たしています。エナメル質が虫歯になっても神経がないので余り感じませんが、象牙質の中に神経が入っていますから虫歯が大きくなると痛みを感じてきます。治療するときは余り大きく削らないで、生きたままの歯を使おうと、なるべく神経を抜かないようにして長く持つようにしています。ですから虫歯は初期のうちに治療する必要があります。

 ▼日本人は面長の顔へ?
 東大人類学の先生が、将来の日本人の顔形はどうなるかとシミュレーションしたところ、あごのえらの部分がなくて、おとがいの部分が伸び、細長い面長の顔貌になってきているといいます。
 それは貴族的な顔なんです。縄文時代とか鎌倉時代には結構がっちりしたあごの、えらが張った顔だったんです。ところが、江戸時代から柔らかいものや、煮たり余りかまなくてもよい食事になってきたため、江戸時代には二種類の形があり、あごが発達して顔が上下につぶれたような顔と、あごが余りない細面の顔に分かれています。
 徳川将軍家は皆貴族的な細長い顔ですね。奥さんは公家の方から入ってきていますから、細くて面長です。ですから将軍家の顔を見たときに、将来日本人の顔はこのようになると大学の先生方は予測していました。

 ▼虫歯が多かった将軍
 一九五七年に増上寺の徳川将軍のお墓を解体してみたところ、二代将軍秀忠、六代将軍家宣、その子供の家継、九代将軍の家重、十二代将軍家慶の頭がい骨が発掘されました。十四代の家茂さんは、顔もしっかりしていて歯も残っているんですが、一番虫歯がひどかったんです。ほとんど虫歯でした。二十歳でかっけによる心不全で亡くなっていますが、食べ物の影響や、長州征伐のストレスで亡くなったのかなあと思いますね。
 将軍の食べ物はほとんど調理したもので今の子供たちと同じようにかまなくてもいい食事でした。歯がぜんぜん磨り減っていません。十二代将軍は六十歳で亡くなっていますが、青年のような歯です。食事はみんな柔らかい、かまなくていいものだったと思います。

この記事は苫小牧民報に掲載されたものです。
(講師 坂歯科医院・坂康司院長)



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